大企業病をご存知だろうか?
いかなる企業も一定規模を超え肥大化すると、組織のトップと社員そして顧客との距離が遠くなり、組織が硬直化や官僚組織化し、無駄が発生し本来提供しなくてよい事業に注力すると共に本来従事するべき事業が疎かになる現象である。
これは企業だけでなく様々な組織(政府)などで起こりうる現象であり、直近の代表例だと日立グループや東芝、海外だとGEが挙げられる。
一般的には、日立は東芝などに比べて大企業病を克服したと言われている。
【出典】産経新聞:iZa
日立グループの場合、10年前には、情報通信システムだけで無く、電力、建機、化学、電子装置、高機能材料、自動車部品、カーエレクトロニクス、金融、デジタルメディアまで総合商社のような品揃えで商品を提供し、主力の事業領域が不明瞭になる中で巨大化してきた。
しかし、2009年度の大幅な業績悪化を契機に、選択と集中を行うことで日立は見事に再生を遂げた!
主力事業をIoT事業とし、主力事業との相乗効果が見込めない事業や世界で戦えない低収益事業を整理する方針を掲げ、一定の基準を満たさない子会社は“御三家”(日立化成など)であっても外部へ事業譲渡するなどし、大企業病を克服するために勇猛果敢に選択と集中を行なってきたのである。日立のケースで重要なことは、自社の将来を見据えて戦略を立て、それに基づき自社の事業や子会社を棚卸し、主力事業に注力する一方で非主力事業を切り離す選択と集中を軸とした組織再編をしていることである。
実は、維新が進める都構想とは、同様に大企業病に罹患した大阪市を再生するための選択と集中を通じた組織再編に他ならないのである。
大阪市は、別途指摘のあった通り、政令指定都市であるがためにフルセットの行政を提供する必要があり、様々な人員や権限そして予算が毎年必要となる。
大阪市フルセット主義からの脱却
これにより二重行政や二元行政も発生し無駄が生まれ、本来大阪市が注力するべき専門領域がボヤけ、大企業病に罹患しているのである。
ここで日立グループと同様に、大阪市が専念するべき主力事業を考えてみたい。
表において現状の大阪市がフルセットで提供している行政を<広域と身近な住民サービス>と<直接業務と間接業務>の切り口でマトリックス化した。
ここで広域行政と定義されるのが法定協の資料が指す大阪市の行う2923事務における428事務であり、港湾業務などが含まれる。
【出典】法定協議会資料 事務-5:大阪府
さらに、都構想により意思決定の一元化などによりバレットさんが指摘する通り、意思決定の遅れや調整業務の煩雑化によって引き起こされる二元行政も解消されるであろう。
最後に言い残したことはこれ
「二元行政(みんなが二重行政と呼んでるもの)は、一元行政のおよそ8倍の調整コストがかかる
二元だから二倍ではない、8倍だ
説明する時間はもうないが、8倍ということだけ知っておいて欲しい— バレット (@Barrettm95sp) 2019年4月6日
残った業務を直接業務と間接業務で分けた時に、大阪市が本来的に注力するべきなのが住民サービスに直接的に従事する業務であることは明確である。しかし現状では大阪市役所も大阪市会も大阪市長もフルセット行政の手前、人的リソースを全て住民サービスの直接部門に割けずにいる。
ちなみに、間接業務について、現状で大阪市に一元されていることで一定の集約効果(スケールメリット)があるともされるが、実際は大阪市と下部組織である行政区で間接人員が二重に発生するなどをしスケールメリットを十分にいかせていない。都構想では、行政区の間接人員は地域自治区に残留せず各特別区本庁舎に集約されるためより集約効果が期待される。
まとめると、都構想とは、1)基礎自治体として注力するべき事業範囲を明確にし、2)注力するべきでない重複事業の一元化や間接部門の集約化によるコストメリット・意思決定の迅速化し、3)基礎自治体となる特別区が住民サービスを向上させることに注力できる仕組みを作ることであり、一種の組織再編なのである。
また、2)注力するべきでない重複事業の一元化や間接部門の集約化によるコストメリット・意思決定の迅速化の効果が以下の通りである。
– 二元行政解消による意思決定・調整コスト減
– 府市重複業務一元化による210名人員削減
– 行政区の間接業務の特別区本庁舎集約化による効率化
– 将来における二重行政の確実な防止(保険的効用)
そして、3)の効果こそが、児童相談所の増設や特別区職員数80名の増員(児童福祉司や生活保護指導員・ケースワーカーなど)や大阪市を4つの特別区に再編することで住民自治やサービスを向上させることなのである。
“選択と集中”こそが、大阪都構想の肝であり大企業病に罹患した大阪市を治癒する特効薬である!