続・大阪都構想が必要な理由〜鉄道事業に見る縮図〜

騙されてはいけない

いきなり血生臭い見出しで申し訳ない。
前のコラムではなにわ筋線と今里筋線の比較を書かせて頂いたが、2031年になにわ筋線が開業し、電車が走り始めたら、最初は利用者はその便利さに感動し、やがてはそれが当たり前となり、お伝えしたような話も昔話になると思う。しかし、鉄道が出来てから沿線に事業拠点や商業施設が集積し「街」としての変化が始まるのであり(注:どこにでも鉄道を作ればそうなる訳ではない)、これが遅きに失した影響は皆さんの気付かない所で残り続ける。

ここ最近皆さんから勉強させて頂いた言葉を借りれば、優先度の比較という事で取り上げさせて頂いたなにわ筋線と今里筋線は前者(が遅れた事)は「公共財の過小供給」、後者は「公共財の過大供給」に当たるかと思われるが、大阪の鉄道地図を見れば「府市合わせ」の元その両者が混在し、多額の税が投入されたにも関わらず最適化が図られたと言うには程遠く、都市のポテンシャルに見合った機能を発揮していないと思われる点が多く見られる。

過日参加させて頂いたタウンミーティングでは、東京と大阪の比較で「○年遅れている」という言い方をすれば、それは10年や20年どころではないという話を聞いた。なにわ筋線は東京で40年前に当たり前だった鉄道が10年後に出来るという事で50年遅れる事になる。今回は、既に開業した鉄道にもそういう例がある事をお伝えしたい。

まず、とある都構想に反対する会派のホームページで以下の鉄道が「ワン大阪(指揮官が一人)で無くても出来た成功例」と紹介されており、憤りを通り越して呆れてしまった事に触れておく。

  1. ①御堂筋線と北大阪急行の相互直通
  2. ②京阪中之島線(中之島〜天満橋)
  3. ③阪神なんば線(西九条〜大阪難波)

①は御堂筋線の一部である以上の意味はない。京都まで走っている鉄道に乗り入れるならまだしも、1970年万博輸送で大阪市外に僅か4駅分飛び出して延伸する時に大阪府と揉めた結果、大阪市がこれを断り、大阪府がわざわざ乗り入れる為の別会社を作ったのだ。まさに府市合わせの象徴とも言うべき事例であり、お陰で利用者は短い距離でも乗継ぎ運賃を取られたり一日乗車券が使えなかったりと残念な事になっている。また、こんな体質のお陰で御堂筋線以外の路線はただでさえ狭い大阪市から外への延伸は限定的だ。ちなみに東京メトロは自前で千葉県や埼玉県まで足を伸ばしている。

東京・大阪の地下鉄

図1 東京・大阪の地下鉄

②の開業は2008年だが、これを成功例と呼ぶのも詐欺的である。この路線の存在意義は彼ら自身が頓挫させてきたなにわ筋線と一体的な物だ。同線とは本来中之島駅で接続する計画であり、御堂筋線と接続する京阪本線や淀屋橋駅の逼迫改善を目的としており、これが出来ないお陰で今里筋線もビックリのガラガラ加減である。僅か3kmで1300億円もの大金が投じられ、パンク寸前の淀屋橋駅の役割を引継ぐ筈だった中之島駅の乗降客数は僅か1万人足らずで淀屋橋駅の1/10にも満たない。単体での営業係数は公表されていないが恐らく最悪レベルだろう。これがなにわ筋線開業の2031年まで23年も続く事になる。彼らに任せておけばそのなにわ筋線の実現すら怪しかった訳で、この路線も危うく「負の遺産」の仲間入りをする所だった。

ガラガラの京阪中之島線

ガラガラの京阪中之島線

人気のない大江橋駅

人気のない大江橋駅

・・・という具合に①②へのツッコミは簡単に終わらせて、今回詳細にお伝えしたい本題は③である。
強調しておきたいのは、こういう情弱騙しのような情報発信を、勉強不足のメディアやコメンテーターではなく、大阪の交通政策をコントロールしてきた政治家自身が行っている事だ。

大阪の地下鉄の特徴

まず、こんなお話を本題の前置きとさせて頂く。
関西の方も、そうでない方も、大阪の地下鉄といえばこういう印象をお持ちの方が多い。

  • ・いつも混んでる
  • ・赤い帯の電車
  • ・運賃が高い
  • ・遅い

御堂筋線

御堂筋線

お気づきかも知れないが、これは殆ど御堂筋線への印象である。大阪の地下鉄路線は9つもあるのに、殆どの皆さんは御堂筋線だけを思い浮かべてしまう。遠方の方は御堂筋線しか乗ったことがないという方も多い。それくらい、大阪は日本の地下鉄の中でも御堂筋線への一極集中ぶりが際立っている。

かつてはこんな時代もあった。
「御堂筋線以外の全ての路線が赤字で、これを御堂筋線の黒字で帳消しにしている状態」
民営化した今現在も、千日前線、長堀鶴見緑地線、今里筋線、南港ポートタウン線の4線が赤字、御堂筋線が超優良級の黒字で、地下鉄全体としては優良級の黒字である。

ただ、忘れてはならないのは、1990年頃、当時は赤字であった事を理由に二度の運賃値上げがあって、今の高い運賃になった事。市内中心部にはライバルとなる他の鉄道がないので、運賃が高くても利用者に逃げられる事も無かった。赤字にもかかわらず放漫経営ぶりが酷かった事は前コラムで指摘させて頂いた通りだ。そこに改革のメスを入れたらあっという間に優良級の黒字になった、という訳だ。

大阪市営地下鉄は福岡や仙台のような地方都市と同じような高い運賃を取り続けて来たが、「市外客が7割」と書かせて頂いた通り、梅田や難波、淀屋橋や天王寺といったターミナルに私鉄やJRがどっさりと乗り換え客を届けてくれる。この点が他の都市と異なり、普通に考えて、開業後の収益に不安材料など殆どない筈である。

そんな地下鉄の民営化が長らく反対されて来たのであり、彼らはこういう大阪の「集金マシン」を自分のコントロール下に置きたいのだろうと私は想像している。「地下鉄は大阪市民が負担してきた市民の財産」など全くの詭弁だ。そして彼らのそんな望みは民営化した今も消えた訳では無い。大阪メトロは私鉄のようにサービスが良くなったと言われるが、大阪市が100%株を持つ事で、その時の大阪市政を担う人達が株主として支配出来、下手をすれば再公営化も全くあり得ない話ではない。

もう一つの「鉄道の二重行政」

漸くここで本題だが、大阪市内の地下鉄道トンネルに、全国でも珍しい区間がある。
建設費が1キロあたり300億と言われる地下トンネルが、全長約4キロに渡って2本、壁一つしか隔てずに併走している区間である。一つは大阪市営地下鉄(現大阪メトロ)千日前線、もう一つは2009年に直通した近鉄難波線+阪神なんば線の鶴橋〜桜川である。多少前後はあるだろうがこの区間だけで〆て約2400億円、この贅沢なインフラの建設費がまともに償還出来ているのかと言えば、千日前線は開業から50年経っても赤字、阪神なんば線は25年くらいの償還期間の道半ばであり、まともに稼いでいるのは近鉄難波線部分の2.0kmくらいだ。

千日前線と阪神・近鉄の併走区間

千日前線と阪神・近鉄の併走区間

大阪難波駅を行き交う近鉄・阪神の電車

大阪難波駅を行き交う近鉄・阪神の電車

千日前線 阪神・近鉄は壁を隔ててすぐ隣を走る

千日前線 阪神・近鉄は壁を隔ててすぐ隣を走る

阪神なんば線は11年前の2009年に開業し、その利便性が歓迎された。
確かにこの区間は、大阪第二のターミナルである難波や南大阪、また難波に集まる奈良や和歌山から神戸方面との間に残ってきたミッシングリングであり、この穴埋めを誰かがやってくれたなら、その人が賞賛を受けるのも無理は無い。

それを我こそがとアピールしているのが先にご紹介したホームページの③である。
しかし、少し詳しい人なら、ずっと前からJR環状線より少し高い位置に作られていた阪神西九条駅を見て歯痒い思いをしていた筈だ。これはつまり、阪神はその頃から立体交差でJRを乗り越えるつもりであった事を意味する。まず、この西九条駅までしか無かった旧・西大阪線(尼崎〜西九条の折り返し運転)がマイナーだったので、あまり鉄道に詳しくない人なら、開通した阪神なんば線といえば大阪難波〜尼崎の10.1kmとか、下手をすれば大阪難波〜神戸三宮の32.4kmが作られたのだと思っている方がいるかも知れないが、2009年に作られたのは大阪難波〜西九条のたったの3.8kmである

西九条駅

西九条駅

南海沿線、近鉄沿線の方が神戸に行こうと思ったら、「とりあえず梅田を目指す」のが長らくの常識だった。ではそんな人達が南海や近鉄の終点である難波からどうやって移動するのかと言えば、やはりいつも混んでいて利用者には半ばウンザリされている御堂筋線という事になる。

神戸と梅田を結ぶ鉄道は阪急、JR、阪神が長年デッドヒートを繰り広げてきたが、この中で阪神は野球では抜群の知名度を誇るものの、鉄道はこの過当競争に埋もれそうな存在だった。しかしそんな阪神は存在感を示すべく、この御堂筋線のウンザリを解消する秘策を持っていた。

それが、神戸から御堂筋線に乗らずに難波へ行ける新路線である。現在の阪神本線野田駅から分岐して南へ下り、近鉄の延伸(難波線 上本町〜難波)と共に1本に繋がる案だ。

しかし、大阪市はこの建設許可を出さず、代わりに阪神が計画した全く同じ場所に、集電規格が異なり直通出来ない、御堂筋線と同じ方式の地下鉄を作った。これが千日前線である。

野田阪神といういかにも乗り換えを意識したような駅が起点となっているが、さて、神戸から難波へ行きたい人はこのルートを利用しようと思うだろうか?実際にここに電車が走り始めると、答えはNoだった。当たり前である。野田には特急が止まらない。急行を使えばこれまでの梅田経由より遅いし帰りは着席出来ない。まったく乗客のニーズを掴めない路線建設で、利用客は今まで通り梅田で御堂筋線に乗り換える方法を変える事はなく、千日前線は当時の大阪市営地下鉄で最悪の赤字路線となった。前コラムで書かせて頂いたなにわ筋線vs今里筋線との共通点は、集金マシンたる御堂筋線からの利用者流出を食い止めた事である。

相互直通のあるべき姿

同じ頃、その阪神電鉄の神戸側でも似たようなニーズがあった。神戸市の西側から姫路へ至る山陽電鉄と、大阪と神戸を結ぶ阪急電鉄や阪神電鉄を神戸市内で連絡可能にしようと言うものである。当時の神戸市は柔軟だった。最初から車両を持たない地下鉄「神戸高速鉄道」を設立し、これらの私鉄と同じ規格で地下トンネルを作って双方から乗り入れさせる方法で全てが繋がり、梅田から姫路までが一つの鉄道であるかのうように直通出来るレールがいち早く出来上がった。神戸市内の地下線内には色とりどりの電車が行き交う光景が見られるが、仮に神戸高速鉄道の自前の車両があってここに織り交ぜてやれば、東京の殆どの地下鉄がやっている事と同じである。千日前線はせめてこのどちらかの方法を取るべきだったと思う。

神戸高速線内を行き交う色とりどりの電車1

神戸高速線内を行き交う色とりどりの電車1

神戸高速線内を行き交う色とりどりの電車2

神戸高速線内を行き交う色とりどりの電車2

阪神電鉄の難波直通構想は結局この野田経由を諦め、代わりに尼崎から分岐していた伝法線を難波方向へ向かって延伸させた。そして千日前線の開業と同じ年の1964年に西九条まで達し(同時に西大阪線に改称)、将来の難波到達を睨んで同駅をJR(当時国鉄)環状線を乗り越えられる高さに建設したのだった。

この6年後の1970年に近鉄が阪神に近付く形で上本町〜難波2.0kmの延伸工事を行った。こちらも千日前線との併走区間だが、理由は同年に開催された万博だった。会場へは難波で乗り換えて御堂筋線でどうぞ、という訳だが、さすがにここは千日前線の出番ではなく、近鉄沿線から梅田へ向かう日常客を大阪環状線(鶴橋乗り換え)から奪う効果があった事もこの延伸に大阪市の抵抗が少なかった理由ではないかと思われる。そしてこの時に両線が繋がるまでの距離は残り3.8kmとなった。実はこの時近鉄は、将来は阪神への直通線へ転用する目的で、大阪難波駅の奥に更に0.4kmの車庫線を作っている。

元々、阪神と近鉄が直通して市内を貫通させる事に大阪府は支持的だったが、千日前線という既成事実を作った大阪市はそういう立場になり得なかったと思われ、結局、この先のお金がかかる区間に鉄道事業者、広域自治体、政令市というタッグは実現せず、暗礁に乗り上げてしまった。

都構想反対派は政令市万能論がお好きなようだが、所詮は都道府県の権限や財源の一部を引き継いでいるだけである。つまり上で述べた三者の力の合計は政令市であろうが普通市であろうが変わらない。その政令市が力に物を言わせた結果この協力関係が築けなかったのだから、何とも皮肉な話である。

私鉄の大規模ネットワークの出現

しかし阪神の直通先の近鉄は500km超の路線網を持つ日本最大の私鉄。正真正銘、名古屋との間には私鉄で唯一、新幹線のライバルとなる特急列車を走らせている。
先にご紹介した神戸地区と合わせると、この3.8kmで繋がる線路は下図のようになる。

阪神なんば線で繋がる広域路線図

阪神なんば線で繋がる広域路線図

私鉄で唯一新幹線とライバル争いをする近鉄名阪特急

私鉄で唯一新幹線とライバル争いをする近鉄名阪特急

新幹線8駅分に匹敵する、まさに私鉄の東海道バイパスとも言うべき鉄道地図である。
大阪において東西方向の広域的な貫通軸は梅田や新大阪に集中するが、これを南の拠点である難波にも分散させる形となり、東京の東京駅と新宿駅の関係に似ている。これを私鉄だけで実現出来てしまうのが何とも関西らしいが、いずれにせよ、この僅かな距離が直通出来ない状態を何十年も放置する事の方が疑問だ。

結局、この実現に向けて再び動き出したのは1997年頃。国による働きかけがあった事と、沿線に存在する大阪市による負の遺産である大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)の再生に一役買うという見方もあったとされ、数十年越しに府市+民間による事業体が設立されるに至ったのだが、事実上千日前線のやり直しである。その理由も後ろ向きな物ばかりだ。これを前述の都構想反対会派は「ワン大阪で無くても出来た成功例」と嘯いている訳である。

二つのトンネル

冒頭では二つのトンネルが並ぶ事がムダであるかの如く書かせて頂いたが、その後千日前線が少し延伸され、今では末端部分で微妙に行き先が異なり、それなりに役割分担をしているように見えなくもない。では今となっては、これはこれで間違いではない、と言えるのだろうか。

結論を言えば、大阪は東京に比べればもっと他に足りない鉄道がいくらでもあるのだから、このような贅沢な資源はもっとそれらに充てるべきだったと考える。千日前線はあくまで阪神の難波直通構想の生まれ変わりに過ぎず、その投資額に見合った役目を果たせていないのだ。

前述のように、この贅沢なトンネル代の借金を楽に返せている訳では無い。東京の副都心線+有楽町線(小竹向原駅 – 池袋駅間 3.0 km)のような、ラッシュ輸送が逼迫して線路を増やした事例とは理由が違う。阪神なんば線と千日前線は共にそれほど高頻度運転ではなく、千日前線は4両しか繋いでいないのだから、むしろ一つにまとめた方が待たずに乗れる充実したダイヤが組めていたと思う。

8両の長さに設計された駅には4両の電車しか来ない

8両の長さに設計された駅には4両の電車しか来ない

そしてこれが40年早く出来ていたなら、今頃建設費の償還は終わり、次なる展開を検討するステージに入っていた事だろう。梅田中心に高頻度ダイヤが組まれてきた阪神本線は阪神なんば線の開通以後尼崎以西で過密ダイヤとなってしまったので、折角近鉄と繋がった線路を利用した広範囲な直通運転が実現していない。折しも甲子園や魚崎付近では阪神なんば線の事業化前から計画されてきた高架化工事が進捗中で、単なる一時移設用として隣にもう1〜2本線路が敷けるくらいの用地が確保されている。阪神なんば線開業後の利用は順調に伸びているが、これが40年前の話であったなら、今頃は輸送の逼迫が課題となってこの高架化工事はそのまま複々線化(上下2本ずつの4線化)という展開もあり得たのではないかと思う。難波の地下に二つ並べたトンネルよりよほど安くて価値がありそうだ。ちなみにこのような複々線化は関東では1980年代後半くらいから多くの私鉄で一斉に計画され、近年になって続々と完成している。特に東武鉄道においては私鉄最長(18.9km)となり、私鉄王国と呼ばれた関西において長らく私鉄最長だった京阪電鉄のそれ(12.6km)を抜いてしまった。

阪神電鉄利用者数の推移[出典:神戸新聞NEXT]

【出典】阪神電鉄利用者数の推移[出典:神戸新聞NEXT]

尼崎駅を行き交う色々な鉄道会社の車両たち1

尼崎駅を行き交う色々な鉄道会社の車両たち1

尼崎駅を行き交う色々な鉄道会社の車両たち2

尼崎駅を行き交う色々な鉄道会社の車両たち2

「鉄道は広域で」が結論

千日前線は大阪市内のど真ん中を走る赤字の鉄道である。しかも大阪市内を貫通する交通軸としてはかなり恵まれた場所であるように思える。しかし当初目論んだ役割を失った事はもとより、郊外直通以外の沿線民を相手にしても黒字にならないのは、大阪市内の枠組みにとらわれて路線長が短かすぎるからだ。ほぼフル規格の鉄道でありながら路面電車のような距離しか走らない。やはり時速70kmの移動手段は広域自治体が面倒を見るべきだと思わされた。このスピードや規模が更に大きく新幹線クラスになれば、大阪府内や神戸くらいまで利用する人はおらず、面倒を見るのは国レベルになる、と言えば分かりやすいだろうか。

大阪の鉄道、とりわけ市内中心部の貫通が東京のそれと比べて便利さやダイナミックさに欠けるのは、都市の規模が違うからとか、お金がないからとか言われそうだが、その前に決定的に違うと思われるのは大阪市の柵みの産物ともいうべきムダが多い事だ。

鉄道ジャーナル2009年6月号表紙

鉄道ジャーナル2009年6月号表紙

2009年に阪神なんば線が開通した事は、実は関西のこの20年ほどの鉄道開通で最も大きなトピックである。その距離わずか3.8km。しかしそれは阪神本線や旧西大阪線など阪神電鉄全体の価値を底上げするほどの出来事だったからであり、逆に今まで出来なかった事の方が謎なのだ。しかも代わりにわざわざ別の鉄道を作ったので、ここにはお金のムダと、時間のムダがある

そんな間にも東京では新しい鉄道がどんどん開通し、それこそ阪神電鉄一社分を上回るつくばエクスプレス(営業距離58.3km、総事業費約9400億円、以下「TX」)も生まれた。TXは沿線の茨城県、千葉県、東京都の広域自治体・基礎自治体が協調的にお金を出し合って誕生したが、ここに東京市が残り、かつての大阪市のような振舞いをしていたらと思うと暗澹たる気持ちになる。

くどいようだが鉄道は広域的な移動手段だ。関西全体で見た場合、鉄道空白地帯の問題は更に多い。財政問題で手付かずの所も多いが、その多くは大阪の存在を抜きに語る事は出来ない。しかし肝心の大阪の鉄道問題を考えるエネルギーの半分が大阪市内に留まる限り、関西全体に繋がって行かないのだ。

大阪のど真ん中に居座る、広域とは言えないもう一つの広域行政。これを一元化する事が大阪や関西の鉄道に富をもたらす事は間違い無く、それは街全体にも富をもたらすと確信する次第である。

1998〜2008年に関東・関西で整備事業が行われていた鉄道[国交省データより編集]

1998〜2008年に関東・関西で整備事業が行われていた鉄道[国交省データより編集]

(文責 午後の紅茶)

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