今回、私としては5度目のコラムとなる。まず、私の半ば愚痴にも近いコラムを4度も掲載頂いたおおさか未来ラボ様に感謝申し上げたい。
さて、今さらながら、5年前の大阪都構想はデマにまみれた状態で5.17の住民投票を迎えた。のみならず、これを推進する大阪維新の会の選挙に、デマは付きものとなった感がある。私の記憶の中で都構想に次いで酷かったのは堺市長選挙だろうか。
そして今回も住民投票を前に様々なデマが飛び交っている模様だ。
デマは悪質な物と相場が決まっており、それは発信者の発言全体が信用に値するか否かのバロメーターだ。だから私はこれをいくらかでもご紹介するのは大事な事だと思う。
という事で、今回はその数あるデマの中でも特徴的な物をいくらか挙げてみる。今回は愚痴っぽくならずに面白おかしく斬って行きたい。
ある反対派は、府市合わせで二重行政なら、都構想は府、一部事務組合、特別区の3つで三重行政になるのだと言う。
では三重行政とは、具体的に何が起こるのだろう?
ここで二重行政(二元行政を含む総称)の実例をおさらいしてみたい。
といった具合だが、ここに一部事務組合はどう割り込むのだろう。或いは何故、東京には三重行政が無いのだろう?
全国の他でもない大阪で問題になってきた二重行政とは、「重なる」テリトリーで「役割の取り合いや擦り合い」をする事だ。
大阪都構想でやろうとしているのは「役割分担」つまりその仕事を行うべき拠点への割り当て直しであり、重なる物はない。
つまり三重行政など起こりえないのだ。何でも数を増やせば良いという物ではない。
東京と大阪の地下鉄
私は言いたい。
「IR(カジノを含む統合型リゾート)って、もう府市でやってるんですけど」
そもそもIRは民間の投資や雇用を生み出す施策であり、お金を使うのは主に民間企業、しかも大阪市がかつて市民の税金を山ほど注ぎ込んだ負の遺産「夢洲」の活用を前提としている。贅沢な可動橋や、人が集まる事が無ければ使われる事もない鉄道海底トンネルも備えたこの人口島に、市民サービスに使えたであろうお金をいったいどれだけ注ぎ込んだのだ。お隣の咲洲の箱物と合わせたら幼児教育の無償化数十年分は賄えるだろう。反対派のある政党は「市の財源を『府』がカツアゲ・ネコババ」と表現しているが、カツアゲ・ネコババされてきたのは市民である。
近鉄や京阪の乗入れ検討が示すように、IR誘致には民間企業もかつての大阪市のベイエリア開発とは全く違う反応を示している。在阪私鉄各社はどんなに大阪が凋落しても新たな賑わいを生み続けてきた立役者だ。近年はJRもここに加わり、公営企業の民営化の恩恵をまざまざと見せ付けてくれた(例:京都駅ビル、大阪ステーションシティ)。夢洲も、そういう賑わいの拠点となって初めて注ぎ込んだ税金が仕事を始める。世界中のIRはその活動から新たな地域活性化を生むツールとされてきたが、こと大阪においては負の遺産からの逆転という大きな意味を持つ。
表題のデマに対して、制度としての模範解答を言うならば「これまでの市の広域行政予算は特別会計で守られ、今まで通り大阪市の広域行政に使われる」となる。問題は、そのお金を使う人たちがどういう方向を向くか、という事だ。ここまで、府市が協力した例とそうでない例を挙げさせて頂いたが、前者がまさに「バーチャル大阪都」と呼ばれる物であり、これを前座とすれば大阪都構想はそのメインイベントとなる。いったい誰が困るのだろう。これまでの無駄遣いで得をしてきた一部の人だけではなかろうか。
夢洲
つまり東京都新宿区、渋谷区、世田谷区、品川区などは、千早赤阪村等と比べて自治体のランクは下だというのが彼らの主張だ。
実際の制度設計としては下図のような図表が提示されている。特別区の権限は水色部分だ。一般市町村の権限すべてを包括しないとはいえ、破格の権限分掌だ。当然、財源はセットで割り当てられる。
大阪にふさわしい大都市制度 ≪特別区制度(案)≫【各論】3 事務分担」
【出典】(出典:副首都推進局「大阪にふさわしい大都市制度 ≪特別区制度(案)≫【各論】3 事務分担」)
反対派は何が不満なのだろうか。
これについてはレッテル貼りが先行していてなかなか歯切れの良い説明を頂けないのだが、かろうじて行き着くのはこういう説明である。
「『特別区』は消防や水道の権限がなくなったり、固定資産税なども自分の税収にならないからのう。
『一般市』でもできるのに、『特別区』はできないことまであるんじゃ。その点では小学生以下になるかのう。
(「今さら聞けない大阪都構想」《自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団 川嶋広稔・北野妙子・前田和彦》 より引用)
つまり上の表で僅かに白く切り抜かれた、特別区が獲得出来なかった一部が問題の全てのように誇張されている訳で、何とも馬鹿げた話と言う他ない。
大阪市民は特別区民となっても、今までの行政サービスは基礎自治体と広域自治体、どちらかが面倒を見てくれる。「旧・大阪市役所」がその役割を失うだけで、大阪市民はその受益を失わない。そのサービスを大阪市役所が提供した方が質が良いとでも言いたいのなら、それは甚だ大阪市役所側の一方的な奢りでしかないだろう。ならばこれまでの二重行政でそんなサービスがあったのかと聞きたくなる。
これらは府に一元化した方が合理的だからわざわざそういう設計をしたのだ。いかに身近な基礎自治体と言えども、「府」の中で府県並みの人口を切り取って府県並みのサービスをしても仕方が無い。しかもそこには基礎自治体として本来あるべき姿の「身近な住民サービス」が欠落している。大阪都構想はそんな役割分担の見直しである。
一つ気になる事を挙げるとすれば、彼らがやたらと「自主財源」に拘っている事だ。自主財源が減るのは「財源が減る」訳では無い。ただ、10年前まで横行していたような不透明な財政運営は間違い無く行いにくくなると思われる。
「絡む首長の人数が2人から5人になってより複雑化する」らしいが、この人は大阪府全体が見えているのだろうか?
大阪府下で「市」に代表される基礎自治体は大阪市だけではない。堺市、吹田市、豊中市、岸和田市、高槻市、枚方市・・・大阪府下の首長の人数は現在でも44人だ。
何故、この中のたった一つ「大阪市」との対立が問題なのか、この人は勉強した方がいい。このデマに対して、私が言いたい事は以上である。
初めてこの言葉を聞いた時は耳を疑った。はっきり言って歴史改竄である。
先日も、大阪選出の国会議員が大きな声で「二重行政が何なのか、さっぱり分かりません!」と発言した事がSNS上で話題になった。
大阪は紛れもなく、二重行政が長年問題視されてきた街である。私は少年時代にこの言葉を学校の教師から教わり、以後何度も聞かされてきた。維新のイの字も無いどころか、橋下徹も知られていない頃だ。
その橋下氏が中心となって大阪都構想が具体化されるにつれて、彼らがこの言葉を言い出したのにはさすがに寒い物を感じた。大阪の将来を任せるべきは誰か、私が確信を新たにした「名デマ」だ。
二重行政という問題意識は今や全国の政令市に広がっている。大阪は言わばこんな問題の大先輩格だった筈。その渦中にある政治家達が自分達の都合に合わせ、その歴史すら「無かった事」にする。後輩達の取り組みを前にして、恥ずかしくないのかと思う。
しずおか型特別自治市(出典:浜松市HP)
何とも低レベルを絵に描いたようなデマ。仮に実際の投票率が60%で賛否が拮抗するとすれば、実に投票率100%で70%が賛成した事になるという、賛成派にとって魔法のようなルールだ。大阪市域にまったく新しい自治制度を導入する事の是非をわざわざ住民に問う訳で、そんな事があり得るのか冷静に考えれば分かる話だ。
しかし、私はてっきり反対派のデモや彼らがばら撒いているビラの話かと思っていたが、世論調査を装った自動音声アナウンスの電話がかかってきて、その中に「投票に行かなくても賛成になる事をご存知ですか」という設問があったというのだ。この手の込みようには唖然とするしか無かった。反対派は「都構想は詐欺」などと煩いが、詐欺師もびっくりの手口である。
前回の住民投票前の話だから、5年も経てば市民の皆さんにも免疫が付いたと思いたい所だが、今回もこのデマがまた回り始めているようである。特に5年前に投票権の無かった皆さんはこれに騙されぬようお気をつけ願いたい。
誰が信じるのだろうという馬鹿げたデマだが妙に球数が多い。賛否で悩む人達の不安を煽るのに都合の良い内容だからだろう。ここで思い出して頂きたいのが住民投票の外国人投票権をめぐる議論である。主に反対派は認めるべき、賛成派は認めるべきで無いという立場だ。当然私も、大阪府民ですら2/3が投票出来ないのに、いくら大阪市に住んでいようと外国籍を持ち続ける人に大阪の形を決められたくは無い。ところが反対派はそうではないのだ。国を守るという意識レベルが疑われるのはどちらだろう。彼らのデマの中に散見される、「反対のための反対」の言葉を所構わずかき集めたから起こるであろう矛盾の一つである。
大阪都構想はあくまで、二重行政という大阪が引きずってきた問題を解決するためのツールなのだ。
ひっくり返りそうになってしまった。東京は既に都区制度で23区の全てと隣接市の一部が03である。大阪06も寧ろこの区分に沿った形となってスッキリしそうだ。そもそも電話番号が変わるというのは住所が変わる以上の混乱を招くだろうに、何故NTTからは何のアナウンスも無いのだろう。
ここまでやるとデマも逆効果、都構想反対派はデマ吐きだという宣伝に近い。
挙げさせて頂いたのはごく一部であり、今や「税金が上がる」「公共料金が上がる」「消防車が来なくなる」「敬老パスが無くなる」などと言ったデマは序の口となった感がある。ここまで楽しく弄らせて頂いたが、困った事にこの中には反対派の法定協委員が高額を注ぎ込んだHPで発信している物も含まれる。他の委員から「是々非々と言うのであれば削除を」と釘を刺され、その時は応じる姿勢を見せたにも関わらずここへ来てそのHPを二つに増やしているのだ。大真面目に反対論を唱えても真実を発信出来ないのであれば、それはもう議論としては終了である。
「〇〇詐欺」と同じく、デマにまみれたグループが社会から信用されなくなるのは当然の報いだ。心ある有権者の皆様はこのようなデマに触れたら出来るだけ多くの方と「デマをデマであると共有する事」にご協力頂ければ幸甚である。
(文責 午後の紅茶)