「政令市だからできた」 「政令市でないと住民サービスが下がる」 都構想反対派がよくいう言葉だが、果たして本当にそうだろうか?政令市は確かに財源としては大きいものを持っているが、それにはやらなければならない義務も付随する。その為に苦しい内実を抱える自治体も複数ある。その実例を上げてみたい。
人口が大阪市を抜き、全国二位の大都市である横浜市だが、水道料金の平均12%の値上げの方針を示した。管路更新や水道使用料の減少に伴うものであり、これは日本の全市町村が抱える問題といえ、値上げは致し方ない事ではあるとは思う。
仙台市は現在の市バス路線や運賃水準を維持すると、30年度には資金不足比率58.3%と劇的に悪化するとして、26年度にも運賃水準の7%引き上げ、資金不足比率の20%以内への抑制をはかり、更に利用者の少ない不採算路線を廃止し、廃止される地域住民の足はデマンド型の地域交通で置き換えて維持するとしている。 これもまた、利用者、つまり地域住民が少なくなれば、当然収支は悪化するので、値上げや路線廃止を検討するのは仕方ない事だとはいえる。
神戸市は近年、市の予算額を超える利用が続き交通事業者の負担増となっている敬老パスに対し、今後70歳以上の人口が増加、現役世代の人口減少が見込まれている事から、これ以上神戸市の予算を増やすのは難しいと結論づけ、現状のままでは制度を維持できないとして、上限110円の優待を廃止、70歳以上の高齢者には小児料金適用への見直しをする事とした。この先の高齢化社会、神戸市の収支を考えると、今のままではこうなるのも致し方ない事だとは感じる。
今回のコロナ禍による京都市の税収減は255億、更に経済活動停滞による生活保護費増大を約10億見込み、京都市の財源不足は約500億となり、これが全て赤字となれば京都市は財政再建団体に陥る事となる。無論、これはコロナという未曾有の災厄によるものではあるが、問題はそれまでに財政調整基金を京都市が十分積み立てておく事が出来なかった事にある。これは固定資産税を払う必要のない神社仏閣か多数存在し、学生が多い事で住民税収入が少ないという京都市の性質上、ある程度は仕方ない事ではある。が、反対派の言うように、「政令市であれば財源が豊か」であるのならこの様な事は起こりえなかったはずであろう。
浜松市はインフラ更新費用や社会保障費の増大等の課題に対し、今のサービス水準を維持する為に、余力があるうちに行政区を減らし、それによる区役所施設の統合、職員減による人件費削減で備えようとしている。 これもまた先をみた施策ではあるが、本当に政令市であるだけで豊かな財源があるのならば、この様な事をする必要はないはずなのではないだろうか。
政令市であるだけで豊かな財源がある訳でもなく、やるべき事が多くなる事で市財政を追い詰める事になり得るという事を相模原市の事例が示してくれていると思う。当初より疑問を持たれていた相模原市の政令市移行は、結果として収支不足に陥る事になり、行財政改革に着手しないといけない状態となった。しかし、今回のコロナ禍で市税収の先が見通せなくなり、今、それさえも延期せざるを得なくなっている。
政令市には確かに財源となる税は多いが、それはやらなければならない役割とそれを維持しなければならない責任がセットでついてくる。決して自由に使えるだけの財源ではないという事を忘れてはいけない。政令市であるというだけで財源があり今のサービスか維持される保証などどこにもない。 今の大阪市でされている施策、拡充された住民サービスは、大阪維新の首長、それを支えた大阪維新、施策に協力した公明党議員達の努力によるもの。その人達がこの先の大阪の発展に必要という大阪都構想なくして大阪の発展はない。
(文責 天)